大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和53年(行コ)32号 判決

岐阜県各務原市鵜沼南町七丁目二二一番地

控訴人

中尾初二

右訴訟代理人弁護士

竹下重人

岐阜市加納水野町四の二二

被控訴人

岐阜南税務署長

小林幸二

名古屋市中区三の丸三丁目三番二号

被控訴人

名古屋国税局長

梅沢節男

右両名指定代理人

岸本隆男

市川朋生

梅田義雄

原田耕平

藤塚清治

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。本件を岐阜地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人ら指定代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

控訴代理人は甲第三号証の一ないし三、第四、五号証を提出し当審における控訴本人尋問の結果を援用し、乙第一号証の成立を認め、被控訴人ら指定代理人は乙第一号証を提出し、当審における証人高崎武義の証言を援用し、甲第三号証の一ないし三、第四号証の成立を認め、同第五号証の成立は不知と述べた。

理由

当裁判所も、また、控訴人の本件訴は昭和五二年二月二四日の経過をもって訴の取下ありたるものとみなされ終了したものと判断する。その理由は次に付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

当審において提出援用された全立証によっても原判決の認定、判断を動かすには足らない。

すなわち、当審における控訴本人尋問の結果中で、控訴人は日頃手帳を携帯し控訴人の関係する各訴訟事項を記載してきたもので、現に原審裁判所刑事部に係属する被告人に対する所得税法違反被告事件につき公判期日として指定された同年一〇月二六日及び同年一一月二五日については該手帳(甲第五号証)のそれぞれの日欄にいずれも「所得税」と記入してあるけれども、本件第二二回準備手続期日として指定告知されたとする同年一一月二四日の欄は空白のままになっており、このことは控訴人がその告知を受けていない証左である旨供述する。しかしながら、右尋問の結果及び原審における控訴本人尋問の結果(第一、二回)、原審証人早野五善の証言(第一回)及び本件記録に徴すると、その当時控訴人は前記被告事件の審理を受けることに主として力をそそいでいたものであり、本件については第一九回準備手続期日が昭和四五年五月三一日に開かれた後、右被告事件の結果待ちのため期日が追って指定となっていた経緯もあって、その後本件第二〇回準備手続期日が昭和五一年六月二二日に指定されたが控訴人の申立によりこれが同年八月一七日午前一〇時と変更され、控訴人は、右期日の告知を受け期日請書を提出しながら同期日に出頭せず、いわゆる休止となり、控訴人の期日指定の申立により第二一回準備手続期日として同年一〇月二六日午前一〇時が指定され、控訴人はその告知を受け期日請書を提出しながら同期日にも出頭せず、これまた休止となって、同日これにつき控訴人の第二二回準備手続期日指定の申立がなされることになったものであり、しかも控訴人が、右第二〇回及び第二一回各準備手続期日がそれぞれ休止となり早野書記官のもとに出頭して各期日指定の申立をする際、同書記官に対しいずれも敢えて期日に欠席したのではなく、どちらも期日が定められていることを知らなかったといい張っていたこと、そして控訴人は(原審認定のように)右一〇月二六日には請書作成のために印鑑を二、三日後必らず持参するといっていながら、本件については爾後そのままとしたことが認められ、かようにして控訴人は本件準備手続の進行について誠実な原告訴訟当事者として通常払わるべき充分な関心を殆んど示していなかったものと考えられるのであって、以上のような事情にかんがみるときは、控訴人の手帳の記載内容が前記のとおりであったとしても、これをもって直ちに控訴人が本件第二二回準備手続期日指定の告知を受けなかった証左とはなしえないものといわなければならない。しかも成立に争いのない乙第一号証、当審における証人高崎武義の証言によると、当時被控訴人ら指定代理人であった高崎武義が同年一〇月二六日午後一時頃その部下職員を通じ早野書記官より第二二回準備手続期日についての照会をされ、同期日を同年一一月二四日午後一時三〇分とする指定を請け、同じく部下職員をして作成させたその期日請書(乙第一号証)を翌一〇月二七日原審裁判所に提出したものである(もっとも右請書にはその日付の記載を誤って同年一一月二七日とした。)ことが認められ、かたがた、この点からも右期日の指定その告知にいたる経過は原判決認定のとおりであることが充分に諒せられる。甲第三号証の一、二も原判決認定を動かすに足る資料とはなし難い。その他にこの認定を覆えすに足る証拠はない。

よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、民訴法三八四条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三和田大士 裁判官 浅野達男 裁判官 伊藤邦晴)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例